〜調達・設計・生産技術が連携して本当に効くコストダウンを実現する方法〜
- はじめに
- 1. 製品形状を見直して金型構造を簡素化する
- 2. 金型寿命と生産数量を適正化する
- 3. 複数部品の統合・共通化を行う
- 4. 海外調達・競争原理を活用する
- 5. 金型仕様・管理方法を最適化する
- まとめ
はじめに
製造業において「金型費」は非常に大きな投資です。
特に射出成形、プレス加工、ダイカスト、ゴム成形などでは、製品単価より先に数百万円〜数千万円の金型投資が必要になるケースも珍しくありません。
しかし実際には、
- 「昔からこの仕様だから」
- 「設計が決めたから」
- 「品質上必要だと思うから」
- 「量産トラブルが怖いから」
という理由で、過剰仕様・過剰品質・過剰投資になっていることが非常に多いです。
優秀な調達バイヤーや生産技術者は、単純な値引き交渉ではなく、
「そもそも金型費をどう減らせるか?」
という上流改善を行います。
ここでは、実際の製造現場で非常に効果が高い「金型費削減の切り口5選」を詳しく解説します。
1. 製品形状を見直して金型構造を簡素化する
なぜ重要なのか
金型費が高騰する最大原因の一つが、
- 複雑形状
- 抜き勾配不足
- アンダーカット
- 深リブ
- 薄肉
- 曲面過多
などです。
つまり、
「製品設計が金型を高くしている」
ケースが非常に多いのです。
金型費を押し上げる代表例
アンダーカット
横方向に抜けない形状。
これがあると、
- スライド機構
- 油圧機構
- 可動コア
が必要になり、金型費が一気に上がります。
具体的削減方法
① 抜き方向を統一する
NG:
- 横穴
- 引っ掛かり形状
OK:
- 上下方向だけで抜ける
これだけで数十万円〜数百万円削減されることがあります。
② 深いリブを減らす
深リブは、
- 加工時間増
- 折損リスク増
- 放電加工増
につながります。
設計段階で高さを20%下げるだけでも大きな改善になります。
③ 曲面を減らす
自由曲面は加工時間が長く、
- CAM工数
- 切削時間
- 磨き工数
が増えます。
必要最低限の意匠だけに絞るのが重要です。
調達が言うべき言葉
優秀な調達は単に、
「安くしてください」
ではありません。
例えば:
- 「スライドを消せませんか?」
- 「2方向抜きにできませんか?」
- 「リブ高さ見直せませんか?」
- 「ここ形状簡素化できますか?」
と設計に提案します。
これが本物の原価改善です。
2. 金型寿命と生産数量を適正化する
過剰スペック問題
金型ではよく、
- 100万ショット仕様
- 高硬度材
- 全面焼入れ
- 高級鋼材
になっていることがあります。
しかし実際の生産数は、
- 5万個
- 10万個
- 短期生産
しかないケースも多いです。
つまり、
「使わない寿命にお金を払っている」
状態です。
具体的な削減方法
① 想定生産数を明確化する
例えば:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年産 | 2万個 |
| 製品寿命 | 3年 |
| 合計 | 6万個 |
なら100万ショット金型は過剰です。
② 金型材質を見直す
例:
| 高級仕様 | 低コスト仕様 |
|---|---|
| SKD61 | S50C |
| 焼入れ全面 | 部分焼入れ |
| 高鏡面仕様 | 標準磨き |
③ 補修前提で考える
「壊れない金型」ではなく、
「直しながら使う」
発想も重要です。
特に量産数が少ない製品では効果絶大です。
バイヤー視点
調達は必ず、
- 生涯生産数
- 補給品期間
- 保守部品数
- EOL計画
を確認するべきです。
ここを曖昧にすると、サプライヤーは安全側で高仕様にします。
3. 複数部品の統合・共通化を行う
金型が増える本質
製品点数が増えるほど、
- 金型数
- 管理費
- 保守費
- 改造費
が増加します。
つまり、
「部品種類削減=金型費削減」
なのです。
具体例
NG例
左右別部品。
- 左カバー
- 右カバー
で別金型。
改善例
左右共通化。
- 共通部品化
- 向きを変えて使用
これだけで、
- 金型半減
- 在庫半減
- 管理費半減
になります。
モジュール化も有効
複数製品で共通部品を使うことで、
- 生産数量増
- 単価低減
- 金型投資効率改善
が実現できます。
調達が確認すべきポイント
- 本当に専用品必要?
- 色違いだけでは?
- サイズ違い共通化できない?
- 左右共通化できない?
- シリーズ共通化できない?
ここを攻めるだけで数百万削減されることがあります。
4. 海外調達・サプライヤー競争原理を活用する
金型価格差は非常に大きい
同じ図面でも、
| 地域 | 金型価格 |
|---|---|
| 日本 | 1000万円 |
| 中国 | 300万円 |
| 東南アジア | 400万円 |
ということも普通にあります。
なぜ差が出るのか
理由は、
- 人件費
- 加工費
- 設備償却
- 間接費
- 品質保証体制
の違いです。
ただし注意点もある
安いだけで選ぶと、
- 精度不足
- 修正多発
- 納期遅延
- 保守対応不可
になります。
実務的な進め方
① 国内・海外相見積もり
最低でも3社以上。
これだけで価格の適正感が見えます。
② 図面を簡素化してから海外展開
複雑金型は海外で事故率が高くなります。
まず設計簡素化。
その後海外。
これが鉄則です。
③ 金型保証条件確認
特に重要なのが:
- 保証ショット数
- 修理対応
- トライ回数
- 改造費範囲
です。
本当に強い調達の動き
強いバイヤーは、
「価格だけ比較」
しません。
- 金型構造
- メンテ性
- 生産性
- キャビ数
- サイクルタイム
まで比較します。
5. 金型仕様・管理方法を最適化する
見落とされやすい巨大コスト
実は、
- 保管
- メンテ
- 改造
- 廃却
にも大きなコストがあります。
よくある無駄
① 使わない金型保管
10年以上未使用。
でも保管費だけ発生。
② 過剰メンテ
毎回フル分解。
本来不要。
③ 改造の繰り返し
設計変更のたびに改造。
結果、新作した方が安いケースも。
改善策
① 金型台帳を整備
最低限必要。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保管場所 | 工場/倉庫 |
| 使用頻度 | 年何回 |
| 修理履歴 | いつ何を修理 |
| 総コスト | 累積費用 |
② EOLルール設定
例えば:
- 5年未使用で廃却
- 補給終了後2年で廃却
など。
③ 改造判断基準を決める
例:
- 改造費 > 新作50%
→ 新作検討
こういうルールが重要です。
まとめ
金型費削減は単なる値引きではありません。
本当に重要なのは、
「金型そのものを安く作れる構造に変える」
ことです。
特に重要なのは以下5つです。
| 切り口 | 本質 |
|---|---|
| 形状簡素化 | 金型構造削減 |
| 寿命適正化 | 過剰品質削減 |
| 共通化 | 金型数削減 |
| 海外活用 | 競争原理導入 |
| 管理最適化 | ライフサイクル費削減 |
優秀な調達・設計・生産技術は、
- 「なぜこの仕様?」
- 「本当に必要?」
- 「もっと簡単にできない?」
を徹底的に考えます。
この視点が、数百万〜数千万円単位の原価改善につながります。